多重人格障害、心的外傷後ストレス障害、パーソナリティ障害といった「精神疾患」は本当に存在するのだろうか、と問われることがある。しかしながら、こうした問いを提起すること自体の妥当性が問われることはあまりない。著者は、精神科疾患の定義や分類を素材に、実在や真理といった哲学概念を検討し、今日の精神医学の根底にある理論的基盤に接近する。